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ルーウェリン反応

ルーウェリン反応(Llewelyn reaction)とは、ソフト翻訳(機械翻訳)、手書き文字認識、OCR、音声認識、スペルチェック、文法チェック、IMEの誤変換など、コンピュータの認識処理、特に自然言語処理(NLP: Natural Language Processing)の認識の失敗に対する、人間側の、感情的な拒否反応心理。特に、文法や語彙への逸脱(文法チェックの場合は指摘ミス)に対する過剰な反応。 理性的な有用性の判断よりも、不信感、嫌悪感が先立つ。

人間同士でも誤訳などに対して過剰な反応を示す場合はある。だが、コンピュータが相手だと「単に処理に失敗した」と感じるに止まらず、コンピュータに対する強い不信感、嫌悪感となる。翻訳者や教師など自分の職業(言語能力)に自信がある場合は、特に強い。自尊心、人間の尊厳、職業上の誇りなど複数の要因が考えられる。たとえば、翻訳者は翻訳ソフトの誤りに対して、過剰に反応する場合がある。 「パソコンが人間の領域を浸食してきた」という危機感も一因であろう。産業革命期のイギリスに発生した機械破壊運動、ラッダイト運動の心理に通じるものがある。

ルーウェリン反応はいわゆるデジタル・ディバイドの一因であり、自然言語処理を含む高度なIT化の推進・普及の妨げとなる。実際には簡単な修正で役立つ処理であっても、冷静な分析をせずに感情的に拒否してしまうからである。アプリケーションやユーザーインターフェイス開発者は、アプリケーションの講習の講師は、このような心理の存在を留意すべきである。

ルーウェリン反応を抑制するひとつの方法は、自然言語認識の成功率を高めることにより、本来の処理の失敗をゼロに近づけることである。また、マニュアルや講習などを通してソフトの特性を十分にユーザーに理解してもらうことも重要である。ユーザー側の努力としては、誤った処理に対して感情的に反応しないように「慣れる」必要がある。

なおルーウェリンとは、無実の忠犬ゲレルトを殺したという伝承がある、ウェールズの王のことである(参考・吉賀氏のページ)。

(04/02/01)


自然言語処理・心理学などの分野で、ルーウェリン反応を研究テーマにする研究者・学生の方を募集しています。ご関心のある方はお知らせください。お手伝いさせていただきます。

以下のような切り口が考えられます。

(07/07/10追加)UP!!


AAMTジャーナル No.37 Jun. 2005 「翻訳工学に向けて-MT+TM翻訳ワークフローSATILA」
AAMTジャーナルの入手についてはAAMT(アジア太平洋機械翻訳協会)までお問い合わせください。

第10回機械翻訳国際会議「MT Summit X」の議事録に英訳版が掲載(pp. 61-62)。

An article in English is available in the Proceedings (pp. 61-62) of MT Summit X (10th Machine Translation Summit, 2005).